ここ最近(と言っても、あまりコラムも書いてないのでそんな最近でもないですが、、、)少し変わった張り替え例があったのでその報告。
仕上がりがあまりにも良かったもので!
まずは、みんな大好き、ボーエ・モーエンセンのスパニッシュチェアー。
かなり硬派な感じで、素晴らしい経年変化したスパニッシュ。
(余談ですが、こう言う『経年変化』を『経年劣化』と表現する人がいて、言葉の選び方で、その人のモノに対する「愛」が測れるな〜と。
ナイス・パティナ!って言って、デンマークではみんな喜ぶんです)
残念ながら裏側のベルトが切れてしまって、長いこと座っていなかったとのこと。
それだったら、ビージェネに譲って、次のオーナーを探してもらおうと言うことになりました。
現行でもこの椅子はありますから、革の部分だけフレデリシア社にオーダー可能ですが、やはり特別な革なのか、結構なお値段します。
このご時世で、この椅子の価格自体も20年前とは大幅に違います。
だったら張り替えも一つの手段になってくるでしょうね。
ただ、こう言った厚い革は通常のミシンでは縫えなくて、特別なミシンが必要です。
ときには手縫も!
なのでいつもお願いしている椅子張り職人さんではこのタイプは手に負えないのですが、本当にありがたくも、ビージェネにはバビル二世を守るポセイドンたちの様な素晴らしい革職人さんがいるんです。(決して僕ではない)
そして出来上がったのがこちら。
素晴らしい!!!!!革は日本のヌメ革を使用しています。
いやーまんま、オリジナルですよ!
裏のベルトも、オリジナルのバックルを生かしながらの再生。
かすかに残ったメーカーステッカーをオリジナルから剥がして、張り替えた革に貼り付ける微妙な仕事は、ビージェネの仕事(汗)。
これまた次の(素晴らしい!)オーナーさんも決まり早速嫁入り。
良い人から良い人へ、良い職人さんの仕事で素晴らしく再生されたものが引き継がれて良かったです。
しばらくして、あるお客さんからまた難しい相談がありました。
上記の椅子、みんな大好きエリック・ワルツのサファリチェアー。
こう言ったノックダウンの椅子、外に持ち出して気軽に使ってしまいそうな椅子を、無垢ローズで作ってしまうと言うなんとも変態的なデザインの椅子ですが、お客さま曰く、しばらく使っていたんですが、どうもこのヘナッとした革の部分がどうにかならんもんですかね?
と言うご相談で。
はい、わかります。
たしかにローズの重厚さに対し、何か革の部分に物足りなさを感じる。。。。
そしてなにより、何かこのヘナッとした、伸び切った様な革の感じ、この薄さから出てしまうのはしょうがないですね。
薄い革を使うので、ミシンで縫えるし、通常の椅子張り職人さんであればこのベースでの張り替えは全然問題ないでしょう。
お客さん曰く、モーエンセンのスパニッシュの様なイメージにしたい!
いやいやそんなご冗談を。まあ、普通は断りますが(笑)、いや待てよ。あの革職人ポセイドン(仮名)さんに相談してみよう!と。
使う革が違いますから、縫い仕様も変えねばなりません。
職人さんのアドバイスを聞きながら細部まで変更し、出来上がったのが、こちら!!
どうですか!
これにはびっくりした。まさに想像以上!
オリジナルを越えました!エリック・ワルツ越えです!
職人さんすごすぎる!
後日談もあって、こんなむずかしい依頼をちょこちょこするもんで、職人さんも「デンマークの椅子」というアンテナがたったのか、先日の上野の「デンマークの椅子展」も行かれた様です。
その話を聞いたときに、「僕の同級生が出てた」って言うので、「どなたですか?」と聞いたら、「織田だよ」と言うので、いや「織田って、織田先生のことですか?」
職人さんは織田先生と同級生だったそうです!
すごいご縁!!!
織田先生の同級生にお仕事お願いしていたとは!!!
この世の中捨てたもんじゃないです。